03 敵国タヴェルニア王国との戦闘!

フェディス歴1874年6月30日。シュロス学園のトルーパー格納庫。シュピゲールを数十機量産することに成功。そのうち1機はヴェルディ専用機、もう1機はティア専用機となった。ヴェルディの許可を得ている。そして、配備先が決まった。配備先は学園都市シュロスの北に位置するルグミディア地方にある重要軍事要塞ウェンツェル。実はこのルグミディア地方は、タヴェルニア王国と接する国境地帯である。両国の関係はよいとはいえず、常に緊張が漂っている。とはいえ、戦争に発展するほどまでには悪くない。
重要軍事要塞ウェンツェルの任務は、タヴェルニア王国の監視と侵攻を阻止し、ルグミディア地方を守護することにある。公表されていないが、実はタヴェルニア軍と小規模ながら戦闘を行っている。侵攻したり防衛したりの繰り返しである。
そして上空には、ウェンツェルに向かうアルバーノ王国所属の飛空船が5隻ある。そのうち1隻はヴェルディの旗艦となっており、残り4隻はトルーパー輸送用飛空船である。これらの飛空船にはすべてシュピゲールが格納されている。その旗艦の飛空船の一室に、ヴェルディとティアの2人がいる。この一室はヴェルディが寝る場所として使われている部屋でもある。普段は女王騎士でさえ出入りが厳しいのだが、ティアだけは特別なようである。現在は2人きり。
なお、ジョルズもこの旗艦に乗船している。シュロス学園の技術者にしてシュピゲールの開発者として、ティアとジョルズの2人のみが乗船しているという。
ティアとヴェルディは紅茶を飲みながら談話している。

「タヴェルニア王国と小競り合いをしているなんて知らなかったです」
「公になれば国民感情が激化して戦争にまで発展しかねない。タヴェルニア王国だって戦争は避けたい。だけど、ルグミディア地方をタヴェルニアが欲しがっている」
「それはなぜでしょうか?」
「このルグミディア地方にはさまざまな資源がある。鉄鉱石、石炭、天然ガスなど…。さらにダイヤモンドやサファイアなど宝石の原石も採掘できる。ここを自国の領土にするだけでも豊かになるといわれているほどだからな」
「なるほど…。でしたら、こちらから侵攻して軍事施設を使えなくすればいいのではないでしょうか?」
「侵攻ってお前、子供のくせに随分と過激だな」
「あちらから仕掛けてきているなら、こちらも正当防衛としてやり返せばいいだけのことです」
「言われてみればそうだな。わかった、検討してみよう」

ティアの提案にヴェルディは乗りかかった。

 

被空船は重要軍事要塞ウェンツェルに着陸。船内に格納していたシュピゲールはウェンツェルのトルーパー格納庫に移動する。ヴェルディはウェンツェルの司令室に足を運び、総司令官ケネス・フォン・テオディド伯爵と面会する。

「これはヴェルディ王女殿下」
「シュピゲールを数十機を持ってきた。それと提案なんだが、こちらからタヴェルニア領土に侵攻して、国境地帯の軍事施設を破壊しようと思うのだが」
「実はわたしもそれについて考えていたのです。うまくいけば、しばらくはタヴェルニアとの戦闘は起こりますまい。それで、シュピゲールについての話になりますが、性能はどのくらいでしょうか?」
「グレイギスの3倍程度といったところだ」
「なんと…」
「ただ、じゃじゃ馬だから使いこなすには一定の訓練が必要だ」
「わかりました。精鋭部隊にシュピゲールの操縦訓練を行いましょう」

話は決まったのだが、ケネスはヴェルディと同じ考えを持っていた。

「それと、シュピゲールの開発者と面会できますか?」
「もちろんだ」

ヴェルディはさっそく、ティアとジョルズを呼び出した。
それから数分後、その2人が司令室に現れた。

「国立シュロス学園技術科1年1組ティアフル・ルンヴェルグです」
「同じく技術科担当教師ジョルズ・アーマルダーと申します」
「重要軍事要塞ウェンツェル総司令官ケネス・フォン・テオディド伯爵だ。座りなさい」

ケネスに言われたとおり、ティアとジョルズは中央にあるソファーに座る。

「ティアフル・ルンヴェルグ君についての報告は受けている。わずか12歳でありながらヒクルム地方守護騎士団の軍勢を一人で制圧し、シュピゲール開発の第一人者であると…」
「いえ、大したことではありませんよ。後ろが守ってくれたから、僕は戦えたんです」
「なるほど。その心意気、大事じゃぞ」

ケネスに気に入られたティアである。

 

それから、ティアとジョルズはシュピゲールの格納庫に足を運んで整備を担当する。一方、ヴェルディはウェンツェルに所属する騎士団上層部とウェンツェル上層部を集めて軍事会議を始めた。

「ダベス地方に攻撃ですと?」

一人の上層部が驚きの声をあげた。ダベス地方とはタヴェルニア王国の地方のひとつで、その地方が向こう側にある。タヴェルニア王国の国境地帯でもある。

「タヴェルニアを黙らせるにはこれしかない。軍事施設をすべて破壊して無力化する。主力となるのがトルーパー・シュピゲールである。おそらく、この情報はタヴェルニアに筒抜けだろう」

ヴェルディは説明する。

「ではどうするので?」
「この情報をリークしろ。アルバーノ王国はグレイギスより性能が圧倒的に高い機体の開発に成功している。やつらは慌てるか、密偵を使って強奪してくるだろう。もしくは、総攻撃を仕掛けるか…」
「誘い込むので?」
「わたしが欲しいのは、タヴェルニアを攻撃する大儀名分だ」
「なるほど…」

上層部はヴェルディの意図を理解する。

「それともうひとつ、この情報もリークするのだ。3日後、ウェンツェルはダベス地方に侵攻する予定があると…」

ヴェルディは黒い笑みを浮かべた。
夜…重要軍事要塞ウェンツェルの寝室…。そこには、ヴェルディとティアがいる。この寝室はヴェルディが利用するので、内装は普通だが広々としている。だが、なぜティアがここにいるのかというと…。

「ティアよ、お前はここでわたしと夜を共にするのだ」
「…ベッドで…ですか?」
「そうだ」
「……………」

こんな感じである。
そして、ティアとヴェルディはひとつのベッドで一緒に寝ることになった。このとき、ティアはTシャツと短パンだが、ヴェルディは黒いブラと黒いショーツのみである。

「うむ。抱き枕としてはちょうどよい」

と、ヴェルディはティアを抱き寄せている。

「なあティア、わたしは思っている。お前をここまで育てた母親のことだ。どれくらい強いのか?」
「はい。僕が知るかぎり…たった一人で奴隷となったエルフを解放したとか…」
「エルフだと!?閉鎖的で人間嫌いといわれているあの種族か!」
「姫様は見たことないのですか?」
「ああ。一度もな」
「あれ以来、お母さんはエルフの里に出入りしているとかなんとかと…」
「なるほど…他には…」
「……………」
「誰にも他言はせぬ」
「実は2年前、お母さんの命を狙う人達が現れたんです」
「なんだと!?」
「結局は、お母さんは僕を守りながらたった一人で撃退したんです。後でわかったことなんですが、その人達の正体が……神聖ヴァルファーレ帝国の工作部隊だったんです」
「ヴァルファーレだと!?それは本当か!?」
「神聖ヴァルファーレ帝国はヴァルファーレ大陸すべてを統一している超大国。だけど閉鎖的で鎖国状態となっている国ですが、文明レベルはカルリアーノ大陸の数百世紀以上先に行くと、お母さんは言っていたんです」

神聖ヴァルファーレ帝国とは、カルリアーノ大陸から離れたヴァルファーレ大陸を統一する超大国。その名は知られているものの鎖国状態となっているため、限られた情報しか入っていない。文明レベルが数百世紀以上先に行くなら、トルーパーを持っていても不思議ではない。それどころか、高性能の機体しか思い浮かばない。

「あれ以来、どうなったんだ?」
「ヴァルファーレの工作部隊が最後まで現れませんでした。あの襲撃以来、お母さんは僕に戦い方を叩き込んだんです」
「また現れると思うか?」
「可能性はないとは言い切れません」

ヴェルディは驚いている。まさかここにきて、神聖ヴァルファーレ帝国という言葉を聞くとは思わなかった。嘘を言っている様子はない。ただ、ティアの母親と接触できれば、なにかがわかるはずだ。

 

そして翌日…フェディス歴1874年7月1日の朝…。重要軍事要塞ウェンツェルのトルーパー格納庫から爆発音が響いた。

「なんだ?」
「うん…」

ヴェルディとティアは起き上がった。
そして急いで現場に向かうと、グレイギスとグレイサが数機暴れまわっている。

「姫様!」

騎士のひとりがヴェルディに話しかけた。

「なにごとだ?」
「賊にグレイギスとグレイサを鹵獲されました!」
「こんな朝っぱらにか?」
「はい」
「シュピゲールはどうした?」
「認証システムを導入してあったおかげで鹵獲されずに済みました。しかし、何機か破壊されました」
「よし。やつらを捕まえるぞ。決して逃がすなよ」
「わかりました!」

騎士はそのまま現場に向かった。

「姫様、僕達も行きましょう!」
「うむ」

ティアとヴェルディはシュピゲールがある別の格納庫に向かった。

「まったく、シュピゲールだっけ?なんで動かなかったんだよ!?」
「後から考えていたのですが、認証システムを搭載していたのでは?」
「認証システム!?そうか…それで起動しなかったわけだ…」

鹵獲したグレイギスをそれぞれ操っているのは、学園都市シュロスで密偵の活動していたカルロ・クランチェとイザルラ・ハーチェストである。どうやら2人はタヴェルニア王国の密偵のようだ。カルロ率いる工作部隊がウェンツェルを襲撃し、アルバーノ王国のトルーパーを鹵獲して今に至る。

「カルロ様、彼らが退きます」
「なんだって!?」

交戦していたウェンツェルのトルーパー部隊が撤退し始める。直後、シュピゲール数機が現れた。

「シュピゲール!?」

これに驚くカルロである。

「カルロ様!」

イザルラが搭乗するグレイギスがカルロをかばった直後、右足を切断される。やったのは…。

「あまりトルーパーを傷つけたくないけど、仕方ありません!」

ティアである。シュピゲールの両手には高周波振動剣ガルヴァブレイドを持って、二刀流の状態で構えている。

「ちぃ!!」

グレイギスを駆るカルロはソードを手に取ってティアのシュピゲールに立ち向かう。ティアの目つきが変わった瞬間、シュピゲールの足の裏にあるアクリナスピナーが起動。立ち向かうグレイギスに高速で接近して切り伏せた。カルロとイザルラを制圧したティアである。一方、ヴェルディはシュピゲールを駆り、タヴェルニアの工作部隊を制圧する。
戦闘が終わって数分後、ウェンツェルの広場にはカルロとイザルラを含む工作部隊が拘束された状態で地面に腰を下ろしている。周りには兵士達がいる。そのとき、ヴェルディとティアが現れる。

「夜襲を想定していたが、朝っぱらから奇襲するとは、こればかりは想定外だったな」

ヴェルディはこう述べる。

「これからお前達を使って攻撃を始める」

ヴェルディの目つきが変わった。

「言っておくけど、わたし達を捕まえても意味はないんだから。わたしが自白しないかぎり、お前達はタヴェルニアに攻撃できないのだからな!」
「自白したな。わたしはタヴェルニアなんて一言も言ってないが」
「しまったー!!」

カルロは重大なミスを犯して、自分達がタヴェルニアの人間であることを話してしまった。

「さて、やられたらやり返す。準備ができ次第、タヴェルニアのダベス地方に攻撃を仕掛ける!」
「「「はっ!!」」」
「それとこいつら、牢に入れておけ」
「「「はっ!!」」」

ヴェルディの言葉に騎士達は従って行動する。

「姫様!」

一人の騎士が現れた。なにか慌てている様子である。

「タヴェルニア軍が攻めてきました!現在は国境で交戦中です!」

この報告を聞いて、騎士達の目つきが変わった。

「よし。予定とは少しずれたがむしろ好都合だ。タヴェルニア軍を蹴散らすぞ。ティア、お前も来い。お前以上の騎士はいないのだから」
「わかりました!」

ヴェルディはティアに自分と一緒に来いと命じ、ティアはそれを受け入れる。

 

重要軍事要塞ウェンツェルから、ヴェルディとティアが駆るシュピゲールを筆頭に、シュピゲールを含むトルーパー部隊はタヴェルニア王国との国境に進軍を開始。
一方、アルバーノ王国首都ヴァーミリアンのヴァーミリアン宮殿…。ウェンツェルからタヴェルニア軍の侵攻を受けたという知らせを受けたアルバーノ王国女王ラミヴェルは事態に対応するため、4大公爵当主を召集して、会議室にて会議を始めた。

「ヴェルディが言うには、進軍したタヴェルニア軍を撃破後、タヴェルニアのダベス地方に進軍して、その地方にあるすべての軍事施設を破壊するとのことです」

ラミヴェルは述べる。

「なぜこんな事態になったのでしょうか?」

ベルドナルスキー公は聞いた。

「報告によれば、タヴェルニア側からの先制攻撃を受けたとのことです」

カイヴァル公はそう述べる。カイヴァル公爵家当主は若い女性である。

「大方、ウェンツェルから挑発したのでしょう。ヴェルディ姫様は非常に好戦的ですな」

ウェルクロム公は見下すような発言をする。

「挑発以前にタヴェルニア軍から先制攻撃を受けたのは事実だ。ウェルクロム公、今の発言は姫様に対する冒涜だ」

トラーレンク公はヴェルディを擁護する。

「わたしはタヴェルニアとの友好関係をここまで構築してきたのだ。トラーレンク公はわたしの苦労を侮辱する気か!?」
「ふざけるのも体外にしろ!友好関係のためだけにタヴェルニアの攻撃を今まで黙認してきたのはどこのどいつだ!」
「貴様!わたしを愚弄する気か!?」
「王族の方々に対する無礼であるぞ!」
「「ぬぅ~!!」」

トラーレンク公がまともな公爵でよかった。カイヴァル公もまともな女性のようだ。ベルドナルスキー公はわからないが…。

「お静かになさい!」

ラミヴェルが一括すると、4人の公爵達が静まった。

「事態はどうあれ、シュピゲールというトルーパーの性能を試すいい機会でもあります。タヴェルニアが攻撃してきた以上、徹底的に叩いておきましょう。トラーレンク公、ルマディア法国に仲介を要請してください」
「え?」

ラミヴェルの言葉にトラーレンク公は動揺した。

「いえその…たたいておくのはよいとして…ルマディア法国に要請しても大丈夫なのですか?」
「ええ。戦争までは避けたいですし、タヴェルニアだって同じ考えだと思います」
「それでは、タヴェルニアと交渉するために仲介を要請する、でよろしいでしょうか?」
「その内容で十分です」
「わかりました。さっそく、ルマディア法国と連絡を取りましょう」

トラーレンク公は会議室から退出する。

 

それから数時間が経過。アルバーノ王国ルグミディア地方に進軍したタヴェルニア軍だが、ヴェルディ率いるシュピゲール小隊によって撃破され、残りのトルーパー部隊はタヴェルニアのダベス地方に侵攻を始める。シュピゲールが持つ圧倒的な戦力によって、タヴェルニア軍のトルーパーは次々と撃破された。
タヴェルニア軍が採用しているトルーパーの名はティグレット。量産機で、性能はグレイギスとほとんど変わらない。武装もグレイギスと同じくソードとシールドとライフル。

「あれが噂の新型機か!?」
「なんという性能だ…!」
「うわああああ!!」

シュピゲールに手も足も出ないタヴェルニア軍だった。
そして、アルバーノ王国のトルーパー部隊はダベス地方にある軍事施設をすべて破壊、もしくは無力化することに成功する。

「よし、国境までに撤退するぞ!」

ヴェルディの命令を受けたアルバーノ軍はすべて撤退を始める。そして、撤退を終えたところで戦闘を終えた。

 

アルバーノ王国ルグミディア地方とタヴェルニア王国ダベス地方の国境地帯を制圧したアルバーノ軍。その国境地帯に前線基地を設置して、警備を厳重に敷きながらトルーパーの整備を行う。
気がついたら、夕方になった。前線基地司令部にはヴェルディと彼女を補佐するティアがいる。そのとき、一人の騎士が現れた。

「宮殿からのお知らせです。まずはこれを…」

騎士は手に持っている書状をヴェルディに渡す。ヴェルディは書状を開封して読み始める。

「なるほど…。母上はルマディアに連絡してタヴェルニアとの仲介を要請したか…」
「はい。ルマディア法国からこちらに外交官を派遣するとのことです」
「到着するまでどれくらいかかると思う?」
「2~3日辺りと考えられます」
「わかった。新たな知らせを待つまで戦闘を続行すると宮殿に伝えてくれ」
「わかりました」

命令を受けた騎士は持ち場に戻っていった。
それから2日経過。フェディス歴1874年7月3日の昼…。ルマディアから派遣された外交官が到着した。外交官の話によれば、タヴェルニアにも外交官が派遣されたとのこと。そして、停戦が呼びかけられるもタヴェルニア王国がアルバーノ王国に対してある条件を突き付けた。それは、シュピゲールの設計図の譲渡である。

「ふざけるな!」

これにはヴェルディも怒りを露わにする。

「だったらこうしてみましょう」

ティアになにか策があるようだ。
その後、アルバーノはこの条件を受け入れ、シュピゲールの設計図をタヴェルニアに渡すことで停戦が合意された。同時に捕虜となっていたタヴェルニアの工作部隊の一員であるカルロ達もタヴェルニア王国に引き渡した。結果的に、タヴェルニアはしばらくアルバーノに手が出せなくなったという。
カルリアーノ同盟機構の盟主はルマディア法国で、各国の紛争などの解決に導く役目を持つ。彼らの交渉力が凄まじく、各国からの信頼も厚い。

 

そして夕方…。重要軍事要塞ウェンツェルの司令室…。

「ぷははははは!!」

中央のソファーに座って嬉しそうに大笑いしているヴェルディがいた。その他に総司令であるケネスと、ヴェルディの補佐を務めるティアがいた。

「まさかあれをシュピゲールの設計図だと思い込むとはな!!」

これが笑うヴェルディの理由である。

「ティアフル君、タヴェルニア王国に渡したシュピゲールの設計図はどのようなものなのか?」

ケネスは聞いた。

「あれはシュピゲールではなくグレイサの設計図です。フレームはシュピゲールですが、中身がグレイサの設計図となっております。型落ちの設計図なら、譲渡しても問題はないでしょう」
「なるほど!そりゃたまげたわい!!」
「バレたとしても法的には問題ありません。なぜなら彼らは、シュピゲールの設計図を見たことがないのですから」
「そういえばそうだったな!ぷはははは!!」

内容を聞いたケネスは嬉しそうに大笑いした。
実はタヴェルニア王国に譲渡したシュピゲールの設計図は、フレームはシュピゲールだが中身はグレイサの設計図である。そうとは知らず、タヴェルニア王国は設計図を得て停戦を合意して今に至る。簡単にいえば、あのシュピゲールの設計図は偽物である。とはいえ、バレたとしても問題はない。

「だが、この秘密は最後まで守るぞ。バレても問題ないが念のためだ」
「さようですな」
「ティアもよいな?」
「はい。…ぷふふふ…!」
「「ぷはははは!!」」

それでも、秘密は3人だけに留めておいた。しかし、笑いが止まらなかった。

 

そして夜…。ウェンツェルの寝室…。ティアとヴェルディがいる。

「まったく、お前に政治的な才能があったとはな。とはいえ、我が国に貢献してくれたお前だ。ティアよ、褒美を取らすぞ」
「ありがとうございます。褒美とは、どのようなものなんですか?」
「そうだな…」

ヴェルディはティアに送る褒美の内容について考え始めた。

「なにがほしい?」

やはり聞いた。すると、ティアは突然、目を輝かせた。

「遺跡調査です!」
「遺跡調査?」

遺跡調査という言葉を聞いて、ヴェルディはキョトンとした表情になる。

「遺跡の奥深くには、10万年以上前に滅亡したとされる古代文明の謎が隠されていると聞きました。だけど、遺跡はすべて国家が管理しています。その遺跡を調査する許可がほしいのです!」
「それはいいが、遺跡の入口の扉が特殊な構造をしているのだ。トルーパーなどさまざまな兵器を駆使しても破壊することは不可能。かすり傷ひとつもつけられない。それでも、遺跡を調査したいか?」
「無論です。遺跡調査は男のロマンのひとつですから」
「ロマンのために遺跡調査するのか!?」
「はい!」

そんなティアにヴェルディはツッコミを入れる。
古代文明…当時は現代とは考えられないほどの科学技術を保有していたとされ、その名残として各地に遺跡が存在するが、特殊な扉に阻まれて奥に進むことができずにいるといわれている。その扉の破壊を試みた国家や組織はあるのだが、結局は破壊できず今に至る。その扉の素材は不明。10万年以上前に栄えた古代文明がなぜ滅亡したのかも不明だが、その扉を開きさえすれば謎を解くことに期待は持てるだろう。

「それと、もうひとつ褒美だ」

そのとき、ヴェルディはティアの顔を両手で掴んで自分のほうに引き寄せて、自分の唇をティアの唇に当てた。キスである。そのキスがしばらく続くと、終わって離れた。キスした2人の表情は赤らめている。

「わたしの初めてだ。王女のファーストキスは非常に光栄だぞ」
「…あの…僕も初めてです…」
「ふっ、それは嬉しいな。今日も一緒に寝るぞ」

そして、2人はひとつのベッドの中に入って就寝に入る。このとき、ティアは普通にTシャツと短パンなのだが…

「なぜ姫様は裸なのでしょうか?」

ヴェルディは下着すら身に着けていない全裸の状態である。下着姿でティアと一夜を過ごしたことはあるが、今回は全裸。なぜ全裸なのかは不明である。しかも、ヴェルディはティアを抱き枕のように抱き寄せて眠っていたとか…。

 

フェディス歴1874年7月4日。ヴェルディとティアとジョルズの3人は、ヴェルディの飛空船で学園都市シュロスに帰還。シュロス学園の生徒達は盛大に出迎えた。とくに女子達はティアの出迎えに熱心である。

「ティア~!」

そのとき、エドナが現れた。エドナはさっそくティアのところに走って、ティアに抱きつく。

「ただいまエドナ」
「お帰り!タヴェルニア軍との戦闘大変だったでしょう!」
「そりゃもう…」
「ティアく~ん!」

さらに、エドナの姉エディナが現れてティアに抱きつく。

「お姉ちゃん心配で心配で…」
「お姉ちゃん離れて!」
「……………」

ティアを巡って火花を散らすエドナとエディナの姉妹である。

「ようやっと帰ってきたか」
「先輩!」

そして、エディナと同じ機甲兵科5年のコーレルとカーグが現れた。

「ティア、次は俺達を呼べよ」
「次からは功績を独占させねえぞ」

タヴェルニアとの戦闘に参加できなかった2人は不満を抱いたとか…。

「本当に心配したんだぜ」
「ジュアス…」

悪友のジュアスに心配されるティアだった。

「俺の心配はなしか…やれやれ…」

ジョルズは述べる。

「ふん…」

ヴェルディは笑みを浮かべた。

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