01 かわいいショタでなんでもできる子!ティアフル・ルンヴェルグ!

ある宇宙空間では大規模な艦隊戦が行われている。戦力は五分五分で、詳細に語ると、一方が戦艦5万隻でもう一方も戦艦5万隻となっている。
この宇宙にはアルタイル同盟連合と地球統一機構という二つの勢力が存在している。アルタイル同盟連合とはアルタイル星域の国家で、地球統一機構は地球および太陽系の国家である。この二つの勢力が激突し、宇宙の覇権をめぐって、長い間戦争状態にあった。
艦隊戦が行われている付近には、巨大な宇宙要塞「バハムートディアー」の存在があった。アルタイル同盟連合の勢力下であり、地球統一機構はその宇宙要塞を攻略するために戦いを挑んだのである。
それから3日経過し、アルタイル軍は地球軍との戦いで劣勢に立たされ、ついにはバハムートディアーの侵入を許すことになる。

「やれやれ…。相手の司令官がラムズフェルド・グレフィルディン元帥じゃ仕方ないか」

管制室の椅子に座って呑気になって紅茶を飲んでいる若い男性がいる。アルタイル同盟連合軍バハムートディアー宇宙要塞司令官兼駐留艦隊司令官アシュケナーズ・ウィンブルドン元帥である。
彼はメカニック兼人型機動兵器のパイロットとしての一面を持つ。無限稼働機関エターナルフォーチュンや最新式の宇宙戦艦など次々と開発し、実用化している。メカマニアでもあるが、同時にエースパイロットでもある。白兵戦でも超人的な戦闘能力を発揮する。また、用兵家として他よりも優れ、超越している。

「相変わらず呑気なやつだアシュケナーズ」
「やあラムズフェルド」

一人の若い男性が管制室に入室した。その男が地球軍の艦隊司令官ラムズフェルド・グレフィルディン元帥である。二人は敵対関係にありながら、憎悪を抱くほどではない。
そして2人はテーブルについて紅茶を飲み始める。

「難攻不落とされたバハムートディアーが容易く侵入できるとは、なにが狙いなのだ?」
「君達地球軍にはバハムートディアーを制圧してもらいたくてね」
「なに?」
「バハムートディアーに駐留する軍人と民間人は戦う前からすでに退去させている。ここにいるのは、僕一人だけだ」
「どうしてまた?」
「アルタイルは堕落した政治家によって衰退している。君達にとっては吉報だろう」
「それを言うなら地球もそうだ」
「もう、アルタイルはダメだ。当初はこの星域に追いやった地球に復讐しようという目的を掲げつつ、人々の生活を豊かにしようとし、地球の環境に相当する多くの惑星を領土として勢力を拡大していった。しかし、気がついたらアルタイルは腐敗して今に至る」
「同じか…。敵対する関係にあったが、お前と同じく人々の生活を豊かにしようと、俺は奮闘していた。にもかかわらず、地球の政治家ときたら、な…」

互いに愚痴を零して笑みを浮かべる。

「お前はこれからどうする?」
「除隊して隠居生活に入る。と言いたいけど……僕達をここまで手玉を取った神様を倒してからにするよ」
「そうしよう」
「現在、その神様は要塞の中枢にいる」

ラムズフェルドとアシュケナーズは決断する。アシュケナーズは傍に置いてあった剣を手に持った。

そして要塞の中枢に向かう。扉を開くと、一人の絶世の美女がいた。しかし、神々しいオーラを漂わせている。

「やれやれ、神様でなく女神様だったとは…」
「ちなみに女神様はなんていう名前だい?」

アシュケナーズは聞いた。その女性は口を開いた。

「わらわはクロノス。宇宙という領域に踏み入って、一線を越えたお前達人間に制裁を与えるために降臨したのじゃ」

クロノスという名の女性である。女性というより女神と表現したほうが正しいかもしれない。

「クロノス…時の女神か…?」
「相手にとって不足ないね」

ラムズフェルドとアシュケナーズは剣を構えて、クロノスと対峙する。

「神々の頂点に立つ創世三大女神の一柱であるわらわを降臨させたのじゃ。覚悟はできておるだろうな!?」
「「笑止!!」」

クロノスは大鎌を空間から顕現して手に持つと、同時に神のオーラを放出。
ラムズフェルドとアシュケナーズは組んでクロノスと戦い始める。それから時間が経過すると、バハムートディアーは爆発。消滅した。
さらに時間が経過。アルタイル同盟連合と地球統一機構は、クロノス率いる神々の裁きを受ける。二大国家が気づき上げた文明が滅亡したのであった。

あれから10万年以上という長い時が経過。世界フェディスのカルリアーノ大陸。
カルリアーノ大陸とは、6つの国が存在する大陸で魔法科学が発展しており、上下水道や送電線などのライフラインが整っている。機械もあるので文明レベルは高い。その6つの国々には、8m以上ある人型機動兵器「トルーパー」を有するが、性能はほとんど変わらない。エルフやドワーフなど異種族は存在するが、とくにエルフに関しては機械を嫌って、森の中でひっそりと暮らすなど閉鎖的となっている。
6つの国とは、アルバーノ王国、グレイフィス王国、オルディース王国、タヴェルニア王国、ラージハイム共和国、ルマディア法国。これら6つの国はすべて同盟関係にあり、同盟の名称は「カルリアーノ同盟機構」。本部はルマディア法国首都サルマディアにある。経済と軍事に関するルールの取り決めや条約などによって、カルリアーノ大陸の平和を守っている。有事の際は情報を共有する義務はあるが、国家機密の共有は義務付けられていない。3年に1度、各国首脳はカルリアーノ同盟機構の会議に出席する義務がある。首脳が病的などの理由で出席できない場合は、代理人を立てて出席させることは可能。

大陸に存在する国家のひとつ、アルバーノ王国。美しき女王が治める小国であるが、他の国々よりも最先端の技術を有しており、経済力や軍事力などに関しては大国に勝るとも劣らない。その最先端の技術を周辺の国々は欲している。貴族制度がある。公爵、伯爵、子爵、男爵の4階級のみ。公爵は全部で4つある。12歳から20歳まで兵役義務があり、12歳になると国立シュロス学園に入学して軍事に関することを学ばなければならない。貴族と王族の場合は国立アルバーノ王侯貴族学園に入学する義務がある。軍事に関することを学ばなければならないと説明したが、学科は機甲兵科と技術科のみ。入学時にどの学科に入りたいかによって自分で選ぶことができる。6年間在学して卒業すると、2年間は従軍しなければならない。学科に応じて配属先が決定される。しかし、貴族の腐敗など、この国にはたくさんの問題がある。他国と比べてライフラインが整っており、清潔な一面を持つ。

フェディス歴1874年6月8日の朝。アルバーノ王国学園都市シュロスにある国立シュロス学園学生寮の一室に、女の子と間違われても不思議ではない美少年がベッドの上で寝ていたが、起床した。
その少年の名はティアフル・ルンヴェルグ。国立シュロス学園技術科1年1組。トルーパー開発などに関連する学業を学ぶ学科に在籍している。同級生達などから「ティア」と呼ばれている。女の子のような容姿をしているが、名前も女の子みたいである。
今の姿は短パンとTシャツなので制服を着る。ちなみにシュロス学園は制服システムを導入している。制服を着て部屋から出ると…なぜか数人の女の子達がいた。

「ティアく~ん、お姉さん達と一緒に朝御飯食べましょう~♪」
「今日もかわいいわね♪」

全員が上級生の女の子である。容姿が女の子みたいだけあって、ティアは女の子達からモテモテでもある。

「おはようございます!そして失礼します!」
「「「待って~♪」」」

ティアは逃亡。逃亡するティアを女の子達は追いかける。
実はティアがこの学園に入学して2ヶ月が経過。以来、ほとんどこのような毎日が続いている。ひどい場合は、上級生の女の子に部屋を連れ込まれてベッドの上に押し倒されるということもあった。とはいえ、なんとか一線は守られているようだ。女の子にモテモテのティアに嫉妬する男性が出てくるのではないかと予感していたが、そうではなかった。しかし、やばい方向に行っている一部の男子がいるので、油断はできない様子である。

国立シュロス学園……首都ヴァミリアンから東の位置にある学園都市シュロスに存在している。兵役義務もあってか、マンモス校となっている。学科は機甲兵科と技術科に分かれている。機甲兵科はトルーパーのパイロットを養成する学科で、技術科はトルーパーなどに関連する技術者を養成する学科である。学生寮も非常に整っているのですべて個室でワンルーム。シャワーとトイレ別々となっている。学生寮自体もホテル並みとなっている。シュロス学園にあるトルーパーはすべて中古である。ちなみに機種の名はグレイサで、一般的に出回っている量産機でもある。
ちなみにティアのトルーパー操縦技術は機甲兵科の1年首席を圧倒的に上回っている。機甲兵科に選択すれば、間違いなく首席となっている。なお、総合成績は技術科1年首席。勉強もできる、運動能力も抜群、そして重度のメカマニア。女の子みたいな顔立ちと容姿でありながらなんでもできる子として、生徒のほとんどから愛されている。とくに女性達から…。そのためなのか、ファンクラブもできている。ファンクラブの名は「ティアきゅん愛好会」で、会員はすべて女性によって占められている。

そして、いつもどおりの授業。授業内容はトルーパーの構造について。技術者たる者、トルーパーの構造をまず知らなければならない。担当する教師はアンジェロ・ミルホッテという20代前半の美人先生である。

「ふわぁ~」

ティアはあくびをする。

「どうしたんだティア?」

隣りにいるティアの悪友ジュアス・クロケッティという少年に話しかけられた。

「ここ最近、変な夢を見るようになるんだ」
「変な夢?」
「宇宙で戦ったり…戦艦にいたり…要塞の中にいたりと…」
「頭…大丈夫か…?」
「そういう反応を期待したよ」

実はティアは謎の夢を見るようになっている。その夢がなんなのかは現時点で不明である。

「ティア君、眠たかったらわたしの部屋で寝るように」
「寝ませんよ!」

アンジェロ先生にツッコミを入れられるティア君であった。実はこの美人教師もティアを気に入っている。ちなみに、彼氏いない歴=年齢である。
授業は続く。

「我が国の人型機動兵器トルーパーの動力機関はエルクリックエンジンと呼ばれる魔法動力機関で、トルーパーは魔力によって動いているのです。魔力を充電できるアルケミバッテリーが搭載されているので、魔力をまともに使えない人でも乗りこなすことができます。エルクリックエンジンの由来は、過去の科学者エルクリック・オルファーナ博士が開発したことから、博士の名前がつけられたとされています」
「質問があります」
「ティア君なにかしら?」

ティアはアンジェロに質問する。

「エルクリックエンジンって、簡単に量産できますよね?」
「はい。比較的簡単に手に入る素材だけでエンジンができるだけでなく、トルーパーの性能を維持しながらコストダウンを行うことに成功しているので、ぶっちゃけ工場と設計図さえあれば簡単に量産できます。詳しいわねティア君」
「もともと僕、トルーパーの作り方について学びたかったのです」
「なるほど。道理で詳しいわけだ。ねえティア君、これ以上学びたかったら、先生の部屋に来る?」
「いえ、結構です」
「それは残念ね…」

アンジェロは落ち込むが…。

「先生、ティア君を誘惑しないでください」
「そんなんだから彼氏できないんですよ」

女子達に責められるも…。

「だまらっしゃい小娘ども!」

その女子達に怒鳴り散らすアンジェロである。
次の授業はトルーパーがある格納庫で行われる。技術者担当の教師はジョルズ・アーマルダーという男性。

「関節部分はすべてアクリナモーターで動いている。さらに人間で言う筋肉の部分はカーボン繊維でできているので、現時点で最強の強度を誇る。そして、このフレームは鋼鉄より重量が同じでありながら強度は鋼鉄を上回るセラミックスでできている」

ジョルズは熱心に講義している。

「強度は完璧でも高出力でなければ意味ないかな…」

と、ティアは考えながら思わず口にするが…。

「それだよティア!」

そのとき、ジョルズはティアに指をビシッと刺した。

「エルクリックエンジンの出力を高めることが、トルーパーの性能を高めることにつながるのだ。各国の課題はまさにそれである」

各国はアルバーノ王国と同様にトルーパーを有しているが、やはりアルバーノ王国と同じく改良が滞っており、悩みのタネともなっている。

「リミッターを解除してみてはどうでしょうか?」

ティアは提案する。

「俺もそれを考えてやってみたんだが、エンジンが持たず、魔力は一気に放出されて爆発したんだ」

エルクリックエンジンはリミッターによって出力が抑えられている。リミッターを解除すれば高い出力は得られるが、エンジンが持たず、さらに内包されていた魔力が一気に放出され、トルーパーは大爆発したという結果になる。

「つまり、エンジンを持たせながらリミッターを解除して内包された魔力を制御できれば問題ないですよね?」
「まあ、そうだが、それができれば各国も苦労しないぞ」

単純なティアのアイデアにジョルズは引いた。

「それじゃあ、次の実験までにエンジンを改良して魔力制御システムを作っておきますから♪」
「「「作れるの!!?」」」

ティアのキラキラした言葉にみんなはツッコミを入れる。

そして翌日、フェディス歴1874年6月9日の朝。トルーパーの格納庫…。ティアは一人ここに残ってトルーパー改造に携わっていた。そして、改造が終わった。技術者教師であるジョルズはいる。

「完成しました。エルクリックエンジンのもろい部分を改良。さらに内包された魔力放出を制御できるように制御システムを開発して搭載。僕の理論では、このグレイサは通常より性能の3倍を発揮します。とはいえ、自分が操縦して試験を行います」
「ああ…うん…」

ティアの説明にジョルズは引いた。ティアはグレイサという改造されたトルーパーに搭乗して起動する。トルーパーが採用するソードを手に取って試験開始。内容は目の前の的を素早い動きをしながらソードで切っていくというもの。素早い動きはトルーパーに無理だとジョルズは呆れるが、ティアはやってのけた。
リミッターを解除して放出された魔力を制御システムで制御することに成功。その状態で、グレイサが素早い動きを披露して、的をバッサバッサと切っていく。1分も経たないうちに終了する。

「すっげーー!!」

本当にグレイサなのかこれと言わんばかりの驚きをするジョルズである。試験は大成功。ティアはコックピットから降りると…。

「う~ん…まだまだ改良の余地はありますね…」

悩んでいた。

「改良の余地ってお前…」

ジョルズは聞いた。

「出力が高くなった分、燃費が悪くなったということです。エターナルフォーチュンがあれば一気に解決ですが…」
「エターナルフォーチュン?なんだそれ?」
「僕の夢の中に出てきた男が開発した無限稼働機関だと言っていたんです。なんだか最近、この夢を見るようになって…。その人のやり方を真似して応用したら…こうなってしまって…」
「夢か…。普通なら笑って終わるが、俺はそうは思えねえ」
「先生?」
「国が挙げてトルーパーの改良を目指していたのだが停滞していてね。それをお前がやってのけたんだ。改良に改良を重ねれば、新型機の開発も夢じゃねえ」
「ホントですか!?」

新型機の開発…。それを聞いたティアは目を輝かせている。

「もしかしたらおめえ、前世が科学者だったりしてな」
「そうあってほしいですね」

冗談交じりに会話する2人である。

「ああティア!こんなところにいた!」
「エドナ?」

明るい声をする一人の女の子が現れた。その女の子がティアに近づいて、そして抱きついた。
女の子の名はエドナ・ターヴェイ。年齢は12歳。国立シュロス学園機甲兵科1年でパイロットを目指している。明るくてわんぱくな性格をしているが、ティアにかなり好意を抱いており、ティアが他の女の子と話すと嫉妬するほど。エディナという姉がいる。

「なんだ?2人はできているのか?」

ジョルズは聞いた。ティアは違うと言おうとしたが、エドナに口を塞がれる。

「はい先生♪」

と、自分はティアの彼女と宣言してしまった。

「ティアく~ん♪」

そのとき、一人の女子生徒が現れて、嬉しそうにティアを抱き締める。

「お姉ちゃん!ティアはあたしの彼氏だから手を出さないで!」
「いやよ!ティア君はわたしの彼氏だもん。姉の彼氏を奪うなんて最低な妹ね」
「ティアはあたしの彼氏!」
「「む~!!」」

女子生徒の名はエディナ・ターヴェイ。年齢は16歳。国立シュロス学園機甲兵科5年。落ち着いた雰囲気を持っているが、機甲兵科全クラスの中でもトップクラスの実力を持つ。ティアのかわいさに惚れこんで、ティアと会うごとに人形のように抱き締めている。エドナの姉である。グラマラスなスタイルと美貌を持っており、男子生徒からモテモテなのだが、ティア以外の男子生徒に眼中なし。たまにだが、ティアを巡って妹エドナと争っている。
ちなみに、ティアとエドナはまだ彼氏と彼女にまで発展していない。

「まったく、騒がしいね」
「賑やかでいいじゃん」

さらに上級生の男子生徒が2人現れた。機甲兵科5年のコーレル・コーミンジャーと、同じく機甲兵科5年のカーグ・ベンナーが現れた。
グレイサの改良に成功したとティアは先輩達に話し、コーレルはさっそくそのグレイサのコックピットに乗り込んで、グレイサを操縦し始める。
それから数分後

「いい動きをするな。出力も半端ない。これなら行けそうだ」

コーレルは感想を述べる。

「行けそう?なんの話ですか先輩?」

ティアは聞いた。

「聞いてないのか?一週間後、この学園で国立アルバーノ王侯貴族学園と機甲試合することを」

国立アルバーノ王侯貴族学園……シュロス学園が平民の学校なら、こちらは王族と貴族の子息令嬢が通う学校でもある。兵役義務は王族と貴族も対象となっているが、それらはこの王侯貴族学園に入学する。王族と貴族が通う学校だけあって、学園の規模がかなりでかく、内装も宮殿並に豪華である。学科は機甲兵科と技術科のみとなっているが、社交科と女子教育科というのがある。社交科は、社交関連の学業を学ぶための学科だが、その真相は実質的な兵役逃れのための学科でもある。この学科に在籍する生徒は全員、兵役から逃れたいという理由だけで選択している。男子のみこの学科に選択できる。一方、女子教育科も同様の理由である。その学科に在籍する貴族の令嬢と王女の場合、ほとんどが社交関連の学業と花嫁修業などが中心となっている。おまけに、社交科と女子教育科に在籍する生徒のほとんどが傲慢で、常に平民を見下している。しかも、機甲兵科と技術科がある建物と、社交科と女子教育科がある建物と、二つの建物に分けられているのは驚きである。シュロス学園と同様に学生寮もあるが、見た目で例えるなら高級ホテル、もしくは高級マンションそのもの。個室はすべて2LDKと、シュロスの学生寮より広々としている。広い湯船がある浴室がついて、さらにトイレも広々としている。学生寮も、機甲兵科と技術科と、社交科と女子教育科とそれぞれの建物に分かれている。豪華さに関しては後者のほうが上である。トルーパーの格納庫の含め全部で10棟ある。アルバーノ王侯貴族学園にあるトルーパーは最新式で、王侯貴族達が金に物を言わせて購入したものでもある。トルーパーの名はグレイギスで、グレイサの後継機にして最新機種。性能はグレイサを上回るが、あくまで普通のグレイサに限定する。
機甲試合とは、トルーパーを使った戦闘の試合である。学園同士で試合することがあれば、各国同士で試合することもある。

「国立アルバーノ王侯貴族学園って王族と貴族の学園でしょ?金に物を言わせて、トルーパーの最新機種であるグレイギスを購入していると聞いたんですけど」

ティアは上級生3人に聞いた。

「ああ。この機体があれば、傲慢な貴族の連中を叩きのめせるというわけだ」

その3人のうち一人であるカーグは答える。

「わかりました。人数分、さっそく改造いたします」
「よろしく頼むぜ」

状況を理解したティアはさっそく作業に取り掛かった。授業、大丈夫なのだろうか…。

そして1週間が経過。フェディス歴1874年6月16日になり、機甲試合開催の日となった。場所はこのシュロス学園の闘技場。もう一度説明するが、シュロス学園対アルバーノ王侯貴族学園の機甲試合である。内容はトルーパーを使った戦闘の試合で、1対1のシングル戦があれば3対3のチーム戦などもある。
具体的なルールを述べると、4年から6年の生徒のみが出場。1学年につき、シングル戦1名とチーム戦3名で計4名が学年それぞれの代表に選ばれる。総勢12人が学園の代表として出場するということである。
出場しないアルバーノ王侯貴族学園に在籍する多く生徒達も、出場選手のサポートや応援などに駆けつけている。機甲試合というより一種の祭りという規模になっている。
シュロス学園のトルーパーの格納庫では、すでにグレイサの改造が終了。すでにテストも済ませたので万全。

「なんとか間に合いましたね」

達成感を得たティアは笑みを浮かべている。

「ああ。貴族連中の顔が見たいぜ」

ジョルズも同じく笑みを浮かべた。

「ティア!」

そのとき、ジュアスが現れた。

「貴族連中が到着したぜ!」

と、ティアに知らせる。

「やっときたか。最新機種がすべてでないことを見せつけるときだ」
「ええ。度肝を抜かしてやりましょう」
「「ふふふふふ…」」

その知らせを聞いたジョルズとティアは黒い笑みを浮かべ、そんな二人にジュアスは引いてしまった。

シュロス学園の校舎入口前…。そこには、到着したばかりの国立アルバーノ王侯貴族学園の生徒とトルーパー・グレイギスの姿があった。アルバーノ学園の制服はシュロス学園の制服と違って豪華さがある。さすが王侯貴族といったところか…。しかし、出迎えたシュロスの生徒とアルバーノの生徒から重苦しい空気が漂い、ギスギスしていた。そのとき、シュロスとアルバーノからそれぞれ、一人の男子生徒が出てきた。

「シュロス学園機甲兵科6年にして生徒会長ケルディス・オングライトである」
「アルバーノ王侯貴族学園機甲兵科6年にして生徒会長、ベルドナルスキー公爵家次男イルムガルド・フォン・ベルドナルスキーである。去年と同じくまた勝たせてもらうよ」
「そう簡単にうまくいくかな?お前達貴族はグレイギスの性能に頼っているらしいが、こっちには秘密兵器があるんだよ」
「強気だな。では、賭け事しよう」
「賭け事?」
「わたし達アルバーノ学園が勝てば、シュロス学園は我がアルバーノ学園の管轄下に入ること。そのときは平民に退学してもらうがな」
「では俺達が勝てば、この場にあるグレイギスをすべて置いていってもらおうか」
「なんだと?」
「ほう…怖いなら賭け事を撤回するか?」
「面白い」
「決まったな。貴族らしいフェアプレイ精神を望む」
「それはこちらのセリフだ。卑怯な真似をしたらどうなるかわかっているだろうな?」
「貴族のような汚いマネはしないさ」
「「うぅ~~!!!」」

互いの学園の生徒会長はにらみ合いをする。この二人、なにか因縁があるようだ。
機甲試合は年に一回行われる。シュロス学園のトルーパーは中古であるのに対し、アルバーノ学園のトルーパーは最新なのが理由で、ほとんどアルバーノ学園に負けている。しかし、今日のシュロス学園は違うようだ。

「すごいギスギスしてますね」

様子を見にきたティアとジュアス。

「あっ、ティア君」

同じく様子を見ていたエディナはティアを見つけると、さっそくティアに抱きつく。

「エディナさん、それはもう…」
「ダメよティア君、こんなところにきては…。貴族の女の子達にティア君は狙われそうだから」
「それはないと思いますけど…」

ティアを貴族の女の子達から守るために抱きつくエディナ。ティアにとって迷惑そうであるが…。

「随分と仲のよいこと」

そのとき、誰かに声をかけられた。声がした方向に振り向くと、アルバーノ学園の制服を着用した3人組の女子生徒がいた。真ん中にいる女子生徒が筆頭のようだ。

「オルリア・フォン・イルメスタローナ…」
「お久しぶりですわエディナ・ターヴェイ。去年の雪辱を晴らさせていただきましてよ」

こちらも2人の間に因縁があるようだ。
去年の機甲試合に二人は戦って、操縦技術だけでエディナがオルリアに勝利したようである。

「どちらさま?」

ティナは聞いた。ティアのほうをみた3人組の生徒は…

「「「ズキューン!!」」」

心を射抜かれた。ティアに一目惚れしたのは間違いない。

「エディナ・ターヴェイ!なんですの?このかわいい女の子!?」
「女の子じゃない。男の子よ!それにこの子、わたしの彼氏よ!」
「えぇ!?」

エディナはティアを彼氏と称し、これについてティアは驚く。

「あなた、なんて名前ですの?」

オルリアはティアに聞いた。

「シュロス学園技術科1年1組ティアフル・ルンヴェルグと申します」
「わたくしはアルバーノ王侯貴族学園機甲兵科5年3組にしてイルメスタローナ伯爵家長女オルリア・フォン・イルメスタローナと申します。それにしても、かわいいですわ~♪」
「うわっ!?」

と、オルリアはティアを抱き締める。

「ちょっと!ティア君に触らないで!」

エディナはオルリアからティアを引き離す。

「平民風情のくせに貴族の身体を触らないでいただけますこと?」
「貴族のくせに軽々しく平民のティア君に触れないでくれるかしら?」
「「ぬぅ~!!」」

オルリアとエディナはにらみ合いをし始める。ティアを巡ってである。

「いいですわ!もしわたくし達が勝てば、ティア君はもらいますわ!」
「わたし達が勝てば、あなた達にはこの学園に転入してもらうわ」
「なんですって!?」
「平民の暮らしぶりがどういうものかを教えてあげるわ!」
「上等ですわ!」
「「ぬぅ~!!」」

こちらも賭け事を約束してしまった。

それから時間が経過。アルバーノ学園の女子生徒の間でティアについて広まった。ティアのショタかわいい姿に、王侯貴族の女子生徒達のほとんどがメロメロ。平民にしておくのは惜しいという声もある。それを察知したシュロス学園の女子生徒達はティアをアルバーノ学園の女子生徒から守るために行動しているとか…。

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